初物食いの大様鰹

江戸時代にはとても貴重だった!?縁起物の「初ガツオ」

こんにちは、AEON.com編集部です。
ポカポカと暖かい春の日差しとともにお魚のおいしい季節になってきました。今回は、今が旬!春の風物詩、初ガツオをご紹介したいと思います。

みなさんはカツオには旬が2回あることをご存じですか?

実はカツオには、春の「初ガツオ」と秋の「戻りガツオ」があります。カツオは暖かい海を好む回遊魚です。南の海で生まれたカツオは、春になるとイワシの群れを追いかけて、太平洋の日本近海を北上します。

3月から4月頃に九州、高知沖、5月頃には伊豆、房総沖を通り、7月から9月には三陸沖までやってきます。この辺りで引き返し、10月、11月は再び紀伊、高知、九州沖を通過し、南へ戻っていきます。

このことから、北上する際に捕れるカツオが「初ガツオ」、南の海へ戻る際に捕れるカツオが「戻りガツオ」といわれています。

カツオが引き返す東北では、西日本ほど見た目や味に差はありませんが、一般的には、初ガツオは赤身でさっぱりとしており、戻りガツオは灰赤色で、たくさん泳いだ分、たくさんの脂がのっているといわれています。

日本人は昔から初物が大好き

日本では、昔から初物や季節を先取りすることは縁起がいいと尊ばれてきました。

初物とは、その季節に初めて収穫された農作物や、初めて捕れた魚介類などのこと。初物には他にはないパワーがあり、食べれば生気に満ちあふれると考えられていました。

「初物七十五日」(初物を食べると75日寿命がのびる)や「初物は東を向いて笑いながら食べると福を呼ぶ」などといわれ、重宝されてきました。

特に江戸時代の江戸に住んでいる一般庶民は、初物が大好きだったそうです。

同じ縁起物として、カツオも人気がありました。カツオはその音が「勝男」とも通じることや、北条氏綱という武将が、自分の船にカツオが飛び込んできて、その船で戦うと勝利を収めたという逸話があることから、縁起物として重宝されてきました。

そんな縁起のいい「初物」と「カツオ」が合わさった「初ガツオ」は、ダブルで縁起がいいということで、それはそれは大人気だったそうです。

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」

松尾芭蕉と並ぶ江戸時代の俳人、山口素堂が詠んだ句です。目には青葉、耳には山ほととぎすの声、口には初ガツオがおいしいという意味で、江戸の人々が好きな青葉・山ほととぎす・初ガツオ、初夏(現在の4月〜5月ごろ)の3つの季語を入れた名句として現代に伝わっています。

また松尾芭蕉も初ガツオの句を詠んでいます。

「鎌倉を 生きて出(い)でけむ 初鰹」

当時、江戸で流通しているカツオは、鎌倉で水揚げされ、生きたまま江戸へ運ばれていました。その様子を詠んだ句です。このような俳句が生まれるほど初ガツオが大人気でした。

江戸っ子はせっかちな気質からか、初物が大好きで、お金に糸目をつけなかったそうです。そのため、初日の初ガツオは超高価なものに…。

「まな板に 小判一枚 初鰹」(宝井其角)ともうたわれるほどでした。

初日以降は急速に値が下がるのですが、見栄っ張り、意地っ張りな江戸っ子たちの間では、あえて初日に買うのが粋の証でした。

「初鰹を食べないのは江戸っ子の恥」

「初鰹は女房子供を質に置いてでも食え」

などという言葉も流行するほどでした。

初ガツオのおいしい食べ方

カツオはたたきがオススメです。

ポン酢が付いていることが多いですが、鮮度のいいものはレモン汁や粗塩だけでもおいしく食べられます。ネギ、ショウガ、ニンニクなど薬味を添えてもいいでしょう。

ダブルで縁起のいい初ガツオ。さっぱりしたカツオがおいしい春から初夏に、カツオを楽しみましょう。

カツオ ~列島を泳ぎ回る回遊魚。江戸っ子が好んだ初カツオ~

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